【ドイツ美大留学】Part1 -ドイツの美大とドイツアートについて
ドイツに来て7年が経ちました。ドイツ美大留学を目標に日本から単身渡独。そしてあと数ヶ月でDiplom(5年一貫性大学院相当制度)が終わろうとしています。今回はこれまで私がどうやってここまで来たのかを振り返りながら、ビザの関係も含めて美大留学の手順をおさらいをしていこうかと思います。ビザ取得に必要な書類や、渡独前にやらなくれてはならないことなど、今後留学を考えている人に向けてまとめていきます。
第一回はドイツの美大情報とドイツアートについて。お伝えします。メリットデメリットなんかも!事前に以前Partnerというサイトで寄稿している「ドイツの美大で教えること、日本の美大で教えないこと」という記事もご一読ください。(サイト内に私のインタビュー記事とかもあるのでぜひ!)
ドイツアートの特徴とジャパニーズアートの特徴
まずはじめに言うと、ドイツアートの特徴を述べる前に、日本の「ジャパニーズアート」は世界的に特殊な部類に入ることを認識して欲しいです。または韓国や中国などを含め「アジアンアート」と括れる部分もあるかも知れません。なぜこんなことが言えるかというと、世界レベルのアートフェアに何度も足を運んでいますが、アジア圏からのギャラリーが出してる作品は、一目見たら分かるからです。私自身が画家なため、絵画中心の分析ではありますが、その特徴はいくつかあります。一つ目はポートレート系、風景絵画が多いことが挙げられます。言葉を選ばすに言うと「写実主義か印象派、表現主義あたりの時代」に見える作品が多いと言えるかも知れません。一つ目に関係がありますが二つ目は、表面的なクオリティが高いということ。これはこのブログ内でも多く言及していますが、作品内に深いコンセプトがあまり見て感じ取れず、表面的な美が先行して目につくスタイルです。三つ目は、アジアンテイストな柄や、伝統的な技法などを使っているパターンです。これは一目見ればもちろんわかることですが、要するにWow!Nice Japanese style!みたいな価値を持っている作品ですね。例えば桜を描くとか。
一方ドイツは絵画でいうと、日本に比べ絶対的に抽象的作品が多いです。時代的にもそうなるのは当然といえば当然です。そしてもう一つ大きな違いは、コンセプト重視の作品が多いということです。後述することになると思うのですが、ドイツの美大ではレポートや論文提出も多いことから、美術史や哲学や心理学など学問的アプローチをしたコンセプト重視の作品作りが目立つケースです。あとは、アトリエが大きいという利点もあって、大きなダイナミックな作品が多かったり、インスタレーション系も多いことがあげられます。日本の作品と比べると大きく違うことは、表面的なクオリティの差です。
ヨーロッパ内でいくつか展示経験もありますし、大きなアートフェアになると他の国からのギャラリーが多いのですが、テイストという程度の各国の特徴は見て取れますが、上で挙げた大きドイツアートの特徴と近隣諸国のヨーピアンアートの差はあまりありません。あまりないと言うと語弊がありますが、アジアとヨーロッパと大きく線引きすることが可能かもしれません、という意味合いです。
ドイツの美大の学費は無料?生活費は?
ドイツ留学の大きなメリットの一つは、国立大学は学費が無料ということです。ヨーロッパ全体に言えることですが、アメリカや日本のように数多くの私立大学があるわけではありません。ですのでほとんどのドイツの大学の国立ゆえに学費は無料で、私立アカデミーや専門学校のような形態のところが学費がかかるという状態です。大学を選ぶ際はその大学が国立かどうか、学費がかかるかどうかを確認してください。 ただ学費が無料とはいっても、街の電車無料券や雑費などで半年に数万円ほど払います。
またドイツの生活費は、日本で学生の一人暮らしをするより安く済ませることができます。ミュンヘンやフランクフルトあたりは家賃が高いですが、多くの場合、学生はルームシェアや学生寮に入り、簡単な自炊か学食で昼晩を食べています。街によって家賃は大きく変わりますが、保険料などの料金も学生料金があります。そして日本の大学生のように、ファッションや遊びなどに散財する生活水準が高いようなスタイルではなく、ドイツ人自体、日本人と比べると割と質素でゆったりとした生活を送っているため、出費があまりありません。(これも街によるか…)まあでも日本人学生よりは慎ましいと言い切っていいと思います。 ということで総合的に考えて、ドイツで学生をすると思うと日本よりは安く生活できるはずです。全部含めて月5、6万円で生活することだってできます。(家賃が高い街でなければ)
ちなみにずっと物価も家賃も安かったベルリンは、今や飽和状態+物価家賃高騰なので気をつけて。
ドイツの美大のスタイルは?
大学の形態ですが、少人数制で一年に一学科五人ほどしか生徒を取りません。そして各学科にメインの教授が一人いて、ゼミのような形態がスタートします。私の大学では、二週間授業ウィークがあり、そのあと一週間がアトリエウィークの三週間ローテーションで進んでいきます。授業ウィークでは他の学科の学生と合同で、実技系のコマと、美術史や美学などの座学コマが朝8時から18時まで毎日。プレゼンやレポート提出、次週やる内容の予習などが山盛りで、毎日ひーひーです。そのあとのアトリエウィークでは授業は一切なく、それぞれの学科カリキュラムが行われます。ワークショップや専門技法の講義だったり、ミーティングだったり、教授との講評を申し込んだり。自分の制作に時間をたっぷり当てられます。
私の大学では、Diplomという五年一貫制度を採用していますが、Bachelor/Master制度の大学もあります。Diplomでは1、2年はVordiplom、3、4年はHauptdiplom、5年生はDiplomand(卒業試験生)という形で、それぞれの節目には進級試験のプレゼンがあります。Hauptdiplomになると授業のコマも減ってきますので制作がメインです。卒業は論文と個展での制作発表で試験を受ける形になります。
日本のように課題という課題は割と少なめで、自分のメインの作品をもっとちゃんと作ることを求められます。それに対して教授にマンツーマンでアドバイスをもらったりする時間というのがメインのドイツ美大の利用価値だと思います。
有名な教授=有名な現代アーティストという構図が多いドイツ美大。大学の名前の露出も上がるので、大学は有名な人を呼びたがるでしょう。それはいいのですが、現在有名なアーティストが、いい教授とは限りません。そして有名なアーティストはもちろん世界中を飛び回って展示や制作で忙しいに決まっています。なので大学にいません!!ですので、有名な教授ということだけで大学選びをしないようにしましょう。Ai WeiWeiとUdKみたいなことになるので…
美大卒業後は?
そのままアーティスト、フリーランサーになる人が多いでしょう。成功する人しない人はもちろんいるとは思いますが、社会保障がしっかりしているドイツですので、アーティストやフリーランスデザイナーとして細々とでもなんとでも生活していけるのがドイツです。そういう意味でもアーティストとして生きるというハードルが、日本と比べてとても低いのが特徴です。工場跡地や郊外の使われていない建物などを市や個人で管理して、放ったらかしにするよりもアーティストに安く提供する、という文化支援的な部分も多く、どの街でもアトリエを構えることができるはずです。そしてもちろん世間的にも露出も需要も、社会的地位も認識されているため、卒業後その道を目指す人が多いと思います。長く学生をやれること、そして社会保証が手厚く受けられること、アトリエが簡単に手に入ること(ベルリンなどを除けば)、生活費安く抑えられるなど、ドイツはとてもアーティストとして生活しやすい国と言えると思います。もちろん外国人にとっても、ビザがフリーサンスビザでアーティスト登録(通称アーティストビザ)を他の国と比較するとかなり取得しやすいため、ベルリンなどに多くの海外アーティストが集まる理由も頷けます。
前情報としてはこんな感じでしょうか!ドイツ美大留学、いいなー!と思ったらぜひぜひシェア、コメントよろしくお願いします。次回は留学の流れについてまとめていこうと思います。
-
前の記事
プロフェッショナルの定義 2018.09.03
-
次の記事
【ドイツ美大留学】Part2 留学についてちょっと考えてみる 2018.10.01