プロフェッショナルの定義

プロフェッショナルの定義

あなたが思う「プロ」ってどんな人ですか? 一つの指標として、「その分野でお金を稼いで、そのお金で生活をしている人」を指す言葉かもしれません。果たして実際はどうでしょうか?お金を稼いでいる人でも、プロ意識が足りないと非難される人もいれば、お金を稼いでいなくてもプロフェッショナルに仕事をこなす人もいるでしょう。周りがあなたをどう評価し、どうカテゴライズするかは大して重要なことではありません。「プロ」という話から始まってしまいましたが、今回は、どんな人がプロかなんてことは実はどうでもいいんです。自分でプロと謳って活動しよう!という話ではなく、「プロから学べること」を自分にたくさん取り入れよう!というお話。

いつからプロになるのか

ドイツで画家として、作家として活動を始めて3年。まだ大学に籍を置き、なんとか生活ができている程度の収入しかない私が、ここ最近思う「プロ意識の大切さ」を今回はみなさんと考えられたらなと思います。

これを読んでいるあなたが、今まだプロでない場合、あなたは今何でしょうか。アマチュア、学生、プロになる前にある多くのステップから、いつになれば「プロ」になるんでしょうか。

たった今からあなたは「プロ」になりました。

想像してみてください。さあ、さっきまでのあなたとは違います。あなたはその分野でたくさんの収入があるとも仮定しましょう。今あなたは誰もが認めるプロ。さあ、今あなたの中でなにが変わりましたか?またはなにを変えなければならないと思いましたか?

あなたは今おそらく自分の思う「プロ像」を自分に当てはめているでしょう。ドキュメンタリーで見たスポーツ選手や芸術家の生活スタイルを思い浮かべましたか?

そのことこそが、あなたが今からできる“プロフェッショナル“なのかもしれません。

あなたが今現実でプロかどうかよりも、大事なことは「プロ意識を持っているかどうか。」このことだけを考えた場合、プロ意識を早い段階から取り入れ、質の向上を図った方が色々とメリットがあるように思います。我々作家に目を向けると、様々なことを見直せるチャンスです。

作品の外面的クオリティ

私自身が、ギャラリーやアートフェアでの展示が増えて来た最近気づくことは、今までいかに、「作品が自分から離れる」ということに対する心構えと準備が足りなかったことでした。考えることができていた「作品の行方」は、これまでせいぜい次の展示まで。それも増してや自分で運送、設営をする場合です。そうなると展示方法は自分が展示できる方法を分かっていればよくて、展示期間や場所を想定したものを作っても問題ありませんでした。壊れたら最悪の場合直せばいい。展示終了までもてばいい、なんて考えることも。 

ですがギャラリー展示が増えると、作品の運送、設営に立ち会えないこともしばしば。国外の展示になれば作品は、荒い搬送を乗り越えてギャラリーまで運ばれなければなりません。展示もギャラリーが行うことにもなりますので、わかりやすくそして丈夫なものでなければなりません。

また作品が売れる場合を考えれば、作品の素材、使用方法や技術的な部分が長い年月に耐えうるかどうかも視野に入れなければなりません。時間だけでなく気候の変化などに対応できるかどうも重要でしょう。

「自分の周りで留まる作品」ではなく、「自分の手から離れていくであろう作品」であることを意識すること。そうすることで作品の作り方なども再考慮する必要が出てくるかも知れません。

作家生活のクオリティ

先ほどあなたが思い浮かべた理想のプロ像。そこにはおそらく「ストイックさ」が関連していることが多いのではないでしょうか。プロスポーツ選手を思い浮かべて見てください。日々の食生活やモチベーションコントロール。多くの作家には本番へのコンディションコントロールは必要ないかも知れませんが、試合以外の部分でも自己管理をして日常を「プロフェッショナル」に生きているのが分かります。

なぜ私たち「芸術家」は、同じ様にする必要がないのでしょうか。

学生の頃から課題に終われ、徹夜が続いて。トイレに行ってる暇もご飯を食べてる暇もない!間に合わない!という生活を私もして来ました。作業に終わりがないと、1日を終わりに出来ない。そうするといろんなことが不規則で不鮮明になっていきます。精神的にもかなり辛い作家生活で、精神を病んでしまうこともあるでしょう。またそういった負のエネルギーを制作への力に変えている人もいるでしょう。 ですがそうなる前にできることはもっともっとあるはず。

芸術家としてのプロフェッショナルな生活を

私が思うプロとは、「日々をプロフェッショナルに生きているかどうか。」作家において言えば、制作または活動につながる行為を毎日行っているかどうか。そしてそのパフォーマンスを上げるために、出来ることを最大限努力しているかどうかです。

ですが、これは「自分を追い込んでストイックであれ」ということでは必ずしもありません。そうして精神を病んでしまっては元も子もないからです。

毎日制作

毎日制作を長いスパンで続けて行くために、日々の制作時間を調節する。毎日生活するための体調管理、精神状況を管理する。全ての行動に「制作」理由づをけることを始めましました。制作時間を取れなかった場合は、事務作業や研究に時間を当てたり、次の制作に繋がることをするようにします。明日も制作できるように、意識的に半日休みにしたり、スケッチなどの自分の肉になるような「筋トレ」をしてみるなど、今日の自分だけではなく、明日、来週、来月の制作している自分を意識します。

睡眠と食

睡眠時間もしっかり取り、出来る限り規則正しく生活をするように心がけます。毎日できるだけ同じ時間に寝て、体調管理に直接繋がるので同じ時間に起きる。フリーランスである私たちは、時間に対する強制が少ない分、不規則になりがちです。また食事面では栄養面を考え、制作中に頭がしっかり働くように血糖値を気にして。集中力持続にいい栄養を摂るようにしたり、消化のことを気にかけたりと、まだまだ見直せる部分はたくさんあるはず。

メンタルコンディション

制作中心の生活に、作家としての人生の不安や作品の悩みなど、作家としての活動を続けていくには、精神的にもとても辛いものです。瞑想やヨガなどのメンタルトレーニングや、ジョギングなどの運動もストレス解消の鍵。
私は最近、制作日誌を書き始めました。今日したこと、制作中に考えていたことや明日しなければならないことを書き残しておきます。iPadで写真を撮って、そのままその写真の横に文章を書いていきます。そうすることで、いつ見てもすぐどの部分に気を配らないといけないかを確認できるようにするためです。
頭の中で溜めて置くと気づかないうちにストレスになってしまうので、ToDoや予定なども直ぐに書き出してしまいます。就寝前に行うことで考えることを減らし、明日なにをしなければならないのかを明確にしておくことで、明日の制作へのモチベーションに繋げます。

 

そう、プロかどうかはお金を稼いでいるかでは決まりません。問題はあなたがプロしての自覚持って行動しているかどうか。日々の生活を見直して、そして全ての行動を自分の活動に、人生に結びつけること。

そしてそれは必ずしも自分に厳しくあると言うことではなく、ただ「きちんと作家として生活する」ということではないでしょうか。

Masaki Hagino
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