芸術家が担う社会の役割についての思い

芸術家が担う社会の役割についての思い

タイトルにもありますが、今回は芸術と社会の関係性について。最近ようやく言語化できるようになったので、
今回はみなさんにシェアしていきたいなと思います。
僕が最近真剣に現代アーティストとして生きる意味を、新たにちゃんと見つめ直した結果です。

今までの
制作を続ける理由


僕は7年前まで、絵を描く理由をあまり深くまでは考えたことはなかったように思います。
アーティストの端くれとして、作品を作り続けることに、例えば野望とかモチベーションとかがありました。
もっといい作品を作りたいとか、わかりやすく教授の評価を気にしていたりとか。
友人とか展示先のお客さんからいい評価をもらいたいとか。
同年代とかの作家に対して、例えばアートフェアで、公募展の受賞とか、いろんな評価基準がありました。
詰まるところ、僕の作品を作り続け研究を続ける理由は、
1番の制作動機である、作品をより良くしたい、研究を持ってして価値のある作品を作りたいという理由の他に

・他人との比較に対して負けたくないなと思う。
・審査員や教授など、評価を下せる対象へのいい評価を期待している。


とかっていう外的要素も含まれていました。
ちなみに、制作に時間のほとんどを使っていたので、作品数に困ったことはなかったので、展示会に間に合わせなきゃいけないとかっていう時間的な圧迫はほとんどありませんでしたが、これが大きいという人もいるかなと思います。

ここら辺の理由っていうのは、僕だけではなくて、多くの作家が同じように思っていることなのかなと思います。

割と自分の研究とか、作業とか、時には感情とか悩みとかにアトリエで一人篭って向き合っていることが多かったります。結果的に僕がずっと思ってきたことは、「自分は社会的な人間では全くない」ということ。
自分のために制作をずっと続けているし、それはとても自分本位だったし、外的評価を求めたとしても結局は自分の手の届く範囲内での現象に目を向けているだけでした。

芸術家が扱う
芸術文化という概念

これまでの記事でたくさん書いてきたんですが、
芸術というのは体系化された学問的な要素があって、こと現代アートというものはその中で新しい価値を見つけるところに多くの評価とその価値が付随しています。ここら辺は他の記事をご覧いただければなと思います。

芸術は学問であると同時に、文化の一つです。
文化というワードはとてもいろんなところで使われるので、改めて文化ってなんなのかという話をしようと思います。

豊かな人間性を育み人間が人間らしく生きるために必要なもの。
相互理解を生み出し,共に生きる社会の基盤を形成するもの。
新たな需要や価値を生み出し、質の高い経済活動を生み出すもの。
人類の真の発展に貢献するもの。
世界の多様性を維持し,世界平和をもたらすもの。
ゆとり
潤いを実感できる心豊かな生活を実現していく上で不可欠なもの。
国民全体の社会的財産。  
   

文化庁

少し省略してまとめ直しましたが、上記の引用は文化庁のHPにあったものをまとめたものです。
文化の中には色々なものが含まれます。宗教観からくるものもあれば、教育で植え付けられたものもあれば、気質だったりか、土地や歴史が影響しているものだったり。慣習とか風習とかいろんなものが含まれると思います。

その中でも特にこの芸術文化というものは、上記のように社会にとって大きな役割を持っていることがわかります。



少しわかりにくいと思うので、砕けて話すと…
まずは「人間が人間らしく生きること」「その人間が共生していくことに大切な、相互理解、社会基盤や多様性を維持すること」という点。これは例えば服を着てファッションを楽しむっていうようなことというのは動物の中で人間しか行いません。衣食住だけで生活が成り立っているのであれば、野生動物と変わらないわけで、芸術を嗜むとかっていうことはとても人間らしい行動であることがわかります。そういったもので心を動かすということは「心豊かな生活を実現していく」ことに繋がるということですね。



芸術文化と
社会的な役割

第一次コロナパンデミックの中、ドイツ政府もといドイツ文化庁の文化に対しての考え方などの発表は、世界的にも評価されていました。(リンク2つ目の記事ではとても詳しく解説されています。)

芸術支援は最優先事項。ドイツ・メルケル首相が語った「コロナと文化」https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/21933

CASE05ドイツ:ドイツのコロナ禍文化政策をまなざすことで見えてくる日本の「これから」(前編)
https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/library/column-interview/50960/


ドイツは文化支援に対してかなりの予算を使ってくれました。詳しい話は上記の2つ目の記事を参照して頂いて、注目したい部分はやはり文化と社会の関係性の捉え方だったなと思います。

特にフリーランサー・アーティストが多いベルリンなどのパワーと活気は、アーティストたちが作っている。とも発言されていたけれど、芸術文化というものは社会とって大きな役割を持っています。芸術文化を守ること、次世代へ紡いでいくことは未来への希望にもなります。
上でも説明した、内在的な人間の精神面にいい影響があるとか、豊かな人間性を作るとか目に見えないようなことばかりだけでありません。
わかりやすいパワーや活気を生むことになるし、もっとわかりやすく言えばお金を生みます。


例えばみなさんは海外旅行に行く時、おそらく文化施設に行くことがほとんどではないでしょうか。パリに行けばルーブル美術館は絶対に押さえておきたいし、バルセロナに行けばサグラダ・ファミリア見ておきたいでしょう。日本に来れば金閣寺や東大寺を見たい外国人観光客の気持ちだってわかります。つまり文化施設は文化を守っているとかそういうことプラス、単純にその場所に莫大な数の観光客を呼ぶ力もあります。それに付随する経済効果も莫大です。京都とかが潤っているのはまさにそれが理由ですね。

旅行などの経済効果ではなく、直接的なアート市場だけを見ても、世界中で莫大なお金が動いています。
実際2020年7月から2021年6月の1年間での「世界のアート市場」で動いたお金は、日本円で約3080億円というデータもあります。(https://jp.prnasia.com/story/62997-3.shtml


芸術をお金の価値で扱うことは、危険ではあるなと思っていますが、資本主義である以上、作品の価値→値段に置き換える構造は仕方のないことです。値段が高い→作品の価値が高いっていう基準にならないことが大切。
まぁオークションは置いといても、事実、経済が動いていることは明白ですね。




現代の芸術家が担う
社会的な役割

芸術文化そのものが、歴史的財産となって観光客が集まって、経済効果が生まれて…
っていう流れは上記で例を出して説明しましたが、

では現代の作家たちが社会にとってどのくらいの役割を担っているのかを、もう少し詳しく見ていきましょう。
ドイツ政府の声明でもわかるように、アーティスト達は未来へのアプローチを行なっています。

芸術には大きく分けて二種類あります。
一つは、
過去のものを継承しながら、表現を磨いていくようなスタイル。
クラシック音楽や、バレエ、オペラ、日本画とか工芸を含むかどうかは置いておいて、
これはクラシカルな意味合いを含んでいます。

もう一つは、
過去を踏まえた上で、アンチテーゼなんかを含みつつ
全く新しいものを作るタイプのもの。これらはコンテポラリーとかモダン的な意味合いを含んでいます。

どちらも、芸術として価値の高いものです。


僕は現代アーティストとして、コンテンポラリーとしての価値を追い求めて、研究と制作をしています。ですのでこちら側の意見が多めになってしまいますが….

芸術を6個に分類した中に美術(造形美術と視覚芸術)があって、美術は学問な訳です。
そして学問としての、学術的な価値を持っていない作品は、美術とは呼ばれないんだということをこのブログでは伝えてきました。
クリエイション(ものを作ること全般)の価値と、美術としての学問的(学術的)な価値は別物です。

例えばデュシャン的な、コンセプチュアルアートの概念を生み出したりしたことというのは、新しい作品形態を生み出したこともそうですが、新しい価値観を生み出しました。

僕は特にコンテンポラリー系の芸術家というのは、研究者だと思っています。科学者が先行研究を踏まえた上で、研究を繰り返して、新しいものを生み出して、人間の生活を豊かにしていくというプロセスは、現代アーティストも全く同じであることがわかります。



科学者は、その研究と実験と制作で
文明」を先に進めています。



現代アーティストは、その研究と実験と制作で、

文化」を先に進めています。



最近僕が思いつきでぽろっと言った言葉だったんですが、
なんかいろんなことが言語化できて整理できた結果の一言だったのかなと思っています。
自分のやっていることに自信が持てたというか、
自分の生き方に少し価値を見出せたということは単純に嬉しかったです。

追加で書くと、クラシック芸術は「文化」を守っていることになるのかなと思います。

まとめ

芸術家は文化を扱っています。
この芸術文化は、過去の芸術文化を守ったり、新しい芸術文化を生み出しています。新しい価値を生み出したりもできます。
新しい価値を生み出して、育てていくと、またそれを守る人も出てきます。
そうして芸術文化を通して、人間の生活を豊かにすることもできるし、未来を作っていくこともできます。
それが文明と混ざり合うことにも繋がる。
これが回りに回って、経済を動かすことになるし、新たな職を生むことになるし、雇用を生むしetc.

ただ作品を作っている、工作ではこうはならない。
芸術を扱っているという自覚を持ってして、自分の作品を、自分を省みって、
文化との関係性をちゃんと確認してみると、もっと自分の作品と、自分の生き方と、自分の人生にちゃんとした意味を持たせられるのかなと、そんなことを最近思うようになりました。



Masaki Hagino
Contemporary painting artist based and work in Amsterdam and Cologne.
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