アーティスト活動のためにベルリン移住をオススメしない理由 part3(まとめ)

アーティスト活動のためにベルリン移住をオススメしない理由 part3(まとめ)

Part1, Part2ではいろいろと詳しく説明を重ねたため、不鮮明になってしまった様に感じたので
言いたかったことをもうちょっと簡潔にまとめようかなと思い立ちました。

 

そもそもこのテーマについて

いろいろと理詰めで話を詳しく説明して来ましたが、このテーマの軸になってる「ベルリン内でアーティスト活動をすること」は、知り合いのドイツ人アーティスト同士(中レベルに位置しているであろう)の会話でも「複雑すぎ、且つ、難しすぎる」っていうのがよく話に上がることなんです。

これまでに挙げた理由をまとめると、
・家探し、アトリエ探し、ギャラリー探しが困難すぎる(飽和状態のため)
・今までベルリンに住むということのメリットだった「生活費(家賃を含む)が安い」がすでにそうではなくなっている(ベルリン人気のため)
・「ベルリンが熱い!」という前情報を解釈し直して見ると、別にベルリンに限ったことではないこと。またアーティストの立場で考えるとそうでもないこと(ベルリン情報がネットに多いためか)
・ベルリンという街の性質からか(若い人が多いため、旧東ドイツ側だったため)、「作品が(高額で)売れにくい」ということ
・英語での会話が生活で多すぎて、ドイツ語が身につかないこと(B1レベル)
・モノやコトやヒトが多すぎて、煩わしい、集中できない。情報過多。(といってベルリンを出た人も多いほど)

「アーティスト活動」を、作品を売って生活をするという観点に少しフォーカスをして話すと、part2でも触れた、「ベルリンでは作品が売れにくいこと」はかなりネックな問題になります。

もう一度整理しておきたい部分は、この記事のポイントは

アーティストにとっての詳しい前情報もなし、そして計画もなし。「アートで有名という情報が豊富だから」という理由で、全くゼロの状態でなんとなくベルリンに移住を決めるのは早計ではないか。

という部分であることを理解して頂けたらなと思います。

 

そもそもじゃあなぜベルリンなのか

アーティスト用の前情報を持たずして、なぜ日本人がベルリンへ真っ先に行きがちなのかと、考えたところ二つ思い当たりました。
ひとつ目は、ドイツの街々についての勘違い。
これ、ありえるかも。と思ったのは、「ベルリンがドイツの中心と思っていませんか?」ということ。ここで難しいファクターを解析するのは、話がずれますので、言いたいことは感覚でのこと。
例えばアメリカのNY、イギリスのロンドン、フランスのパリ、日本の東京。飛び抜けている大都会、国の代表!という感覚で、ドイツはベルリンなのか、ということ。
実際ドイツの街あたりの人口で考えた大都市ランキングで見れば、ベルリンがずば抜けています。これは今までの記事でも書いた様にベルリンが熱い!ということで人が集まっているのは、十分わかります。ただ見て欲しいところはその下の部分。ずらっと続くハンブルク、ミュンヘン、ケルン、フランクフルト、シュトゥットガルト、デュッセルドルフ… こんなにも次に続く大都市がまだまだあるんです。そして給料ランキングを見てみると、上に挙げた都市近郊がずらずらと並びます。(ベルリンは18位)ここでの話で、このランキングや算出方法をすべて考慮に入れる必要は全くないのですが、ドイツに住んで丸7年。言いたかったことは、ドイツの大都市は割と分散しているということです。つまりベルリンが(大都市ではあっても)大都会なのかと、言われたら、いやそんなわけないよ。という人の方が多いだろうなということ。なのでベルリン以外の街でももちろんチャンスがたくさん転がっているんですよ。アートシーンも盛り上がっているところは別にもあるんですよ。と言ってみたい。

そして二つ目は、わかりやすく、「ベルリンの情報が多いから」 ベルリンをオススメしている、ベルリン在住の日本人の露出が、ほかの街在住の人に比べ、明らかに多いからです。もちろんベルリンはとてもいい街なので納得。ただpart2でも言った様に、ベルリンにいる多くの人はベルリンの虜になってるので、ほかの街に長く住んだことがないケースが多いのではないかな、とも思う情報も多いです。「それ、ベルリンだけの特徴じゃなくって、ドイツの(上に挙げた)他の街にも当てはまる特徴だよ」っていう情報も多いわけです。もちろん異国に移住をする場合、先人がどの様に生活をしているのか、ビザはどうしたのか、なんていう見える困難が事前に予測できる場所に行ってしまう気持ちは、十分わかりますが、アーティストにとっての情報をしっかりと解釈し直す必要があるのかなと思います。

ベルリンの独特なアートシーンという魅力

ではそれ以外なにに惹かれるのかといえば、アーティストにとってこれ以上の魅力はないでしょう。ですがpart1,2でも書いた様に、独特なアートシーンが且つ世界レベルなのは、トップレベルの人たちなんです。もう世界中の美術館やギャラリーで展示を組まれている様な人が、ベルリンを拠点にしているというだけのことだったりします。目のつく、そして手の届くかも知れない範囲にいる人たちは、果たしてベルリンを拠点にしているのか、そしてベルリンに滞在することの恩恵を受けているのかということ。そしてさら下層はなんとなくベルリンに集まって、なんとなくアーティスト活動をして、うまくいかなくて、なんとなく帰って行ってしまう人たちも多いということ。 ベルリンでしか手に入らないものも、たくさんあると思いますが、それはほかの場所からアプローチをしてもいいんじゃないか?ということ。

別の街で、または郊外でアトリエや家を安価で手に入れ、制作に集中する。週末はほかの街のギャラリーのオープニングや大きな展示会を見に行く。ギャラリーへのアピールもそこでできるでしょう。作品の外面的、内面的質を上げ、コンクールやギャラリーへの応募を続け、自分のドイツアートシーンの中での立ち位置を少しずつ上げていく。
こうすることでベルリンの飽和状態であるアートシーンの中に埋もれることなく、頭が出た状態で、ベルリンへ再度アプローチをしてみてもいいのではないでしょうか。ベルリンのアートシーンは世界レベルで、そして刺激的、魅力的であることは間違いありません。だからこそそれを手に入れるために、プランを立てて活動することが大切なのではないでしょうか。

 

結局なにをしたいのか

そしてこのpart3に渡った記事の言いたかった部分はここに収束します。海外で、またはドイツまで来て、一体なにをしたいのか。ということ。それが今、何としてもベルリンでなければいけないのなら、もちろんこんな記事を読む必要なんてありません。ただ僕がそうだった様に、「日本ではダメだ、海外で活動をしなければ」という考えの元、ドイツを選んだのであれば、上記にもあるように他の大都市でもいいんではないのかという提案です。ドイツ全体のアートシーンに目を向けると、日本とは比べ物にならないくらいそのチャンスは転がっています。作品を買う人も、ギャラリーも、コンクールも、アーティスト人口も、何もかも日本よりも多いと思います。つまり活動がしやすい、息がしやすいということです。なので活動がしにくいであろうベルリンを選ぶ必要性がどこまであるのか、考えてみてもいいのではないのかと思います。

これは別にベルリンだけに決まった話ではないでしょう。ほかの国のほかの街でも当てはまることではないのかなと思います。