本当に作品は売れる事が正解なのか

本当に作品は売れる事が正解なのか

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今回はメンバーシップ記事からの転載です。
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アーティストにとって作品を売るかどうかというのは、一番簡単な理由で言うと、「お金が必要だから」というのは大きいはず。

多くの作家や学生にとって一番の目下の目標というのは、「作品の収益のみで生計を立てられる」です。
ご飯食べられる、家賃払えてバイトしなくてよくて、そして画材も買えて、なんならアトリエを借りれる。
これが出来るかどうかの部分は一つのボーダーラインになっているはずです。

極端な話、月30万円分売れたらOKなのか。


ですがこの話はこの
お金は大切よね
っていう話以外の部分。純粋なアートマーケットとアーティストとしての価値づけなどの話。


もしあなたが
10億円持っていたら

生涯年収5億円みたいなことを言われるので、適当に10億円としましょう。
貴方が今生涯心配する必要がないほどのお金を持っていたとして、
もう一度聞きます。

貴方の作品は売れた方がいいですか?

自分の作品が例えば10万円、30万円くらいだとして、10億円持ってたらそんな端金を稼ぎにはいかないと思います。その上でさっきの質問を考えてみましょう。


美術が他の商品と大きく違う点は、文化的要素を多分に含んでいるということ。むしろそうであれということ。
そしてその分かりやすい終着点は、
100年後に遺すことができる」という部分です。
世界中の美術館に所蔵され時を超えて多くの人に見てもらう事ができるのが美術作品です。

貴方が美術作品を作っている場合
美術である以上、きっと100年後の遺すべきなはずです。(もちろん作品の形態によっては、燃えたりして完成することもあるけれど、これは映像とかが残ったりする)
美術は文化的な側面を強く持つため、その作品が残ることは文化を進めることに貢献するし、現代の美術家としての本業本質であって、責任なのかなと思います。

ではどうすれば作品が残っていくのかという話になるけれど…


作品は
買って貰って初めて残る

買ってもらわずに残す方法はもちろん0じゃありません。
賞を受賞したり、美術館に所蔵されれば結果的に残るけれど、その二つを獲得するためにも売れる経過をスキップできないよなぁとも思います。

美術作品とアートマーケットの存在は切っても切れない関係性で結ばれています。
良い意味でも悪い意味でも。
優れた作品がアートマーケットで高額になるのは道理だけど、
優れてなくてもうまくやれば高くなったりもするし、第三者の思惑で値段を上げられ、そのせいで作家人生が閉ざされるケースだってたくさんあるそうです。

ただ良い悪いは置いておいたとしても、作品を第三者がどんな理由であれ購入して保管してもらうというこの単純な行為が、未来に美術作品を残すための重要なファクターです。

こういう話をするといや、ゴッホが、モディリアーニが、ヘンリー・ダーガーが… みたいなことを言う人がいるけれど、数千年の美術史の歴史で作家の分母の数を考えればそんな例は異常な例だと覚えておいてくださいね。


つまり作品がアーティスト本人のアトリエにあっただけでは、どれだけ良い作品だとしてもそれは評価を受けていないのとほぼ同義。
資本主義である以上、いい作品は評価の対価として値段がつけられ買われることはある程度当然の事象だと思います。

ただ売れればいいのか

もちろんこれは必要十分条件ではなくて、
売れさえすれば残るのか?と言われれば全然違います。
それはモノとしての価値で売買が行われた場合は、残らない作品が殆どでしょう。
分かりやすく言うとハンドメイドのアクセサリーとかと同じで、「個人的に気に入ったから買う」というモノとしての価値だけの売買では、
アートマーケットの上で美術的価値を評価されて売れた」作品とはたとえ同じ値段だったとしても価値の担保の場所が別のところにあります。

大切なことはどれだけアートマーケットの中で評価を受けた上で、作品を買ってもらえたかという部分。

コレクターや、美術館やギャラリーなど作品をちゃんと保管してくれないと作品は劣化するし、いつかはセカンダリーマーケットに売りに出してくれたりしないと残っていかなかったりする。

売れる作品を作れとも言わないし
売れない作品がいいとも言わない

目先の利益じゃなくて、自分に美術作品ってどういう価値を受けて欲しいのかということを意識して制作して販売をする必要があるなと
最近感じています。