美術史勉強のためのオススメの本

美術史勉強のためのオススメの本

先日ご質問を頂きました。
「美術史を勉強する際に、オススメの入門書籍はありますか?」ということでしたので
オススメの本をいくつかご紹介します!

美術史を学ぶことの大切さ

まずはじめに、このブログではかなり重複する内容ではありますが、現代アートを作る・生み出す側の人間がどうして美術史を勉強する必要があるのかということ簡単に説明します。いくつかこれについては詳しく説明している記事があるので、過去記事をご一読頂くとわかりやすいかと思います。アートとはなんなのか?というよくある疑問で、私はこのブログではアートとは「学術的価値がある」必要があると何度も書いてきました。技法などに特化していくと、伝統作品との区別がつかなくなります。そしてよくある感情などを反映させた作品なども、すでに過去にそういう時代は過ぎ去っています。
世の中で「アート」とされるものには大きく分けて2種類あります。ひとつは「伝統的なことを紡いでいく」ものと、「新しいものを創っていく」ものです。前者は例えばクラシック音楽とか、バレエとか、日本画などなど。後者はコンテンポラリー○○(現代アート)というような名前がつくものですね。このブログで重要なのは後者において、何を「新しい」とするかということです。これは逆をいうと、新しくないものを創った場合、現代アートはその価値を失うということです。砕けていうと、「パクリ(模倣)作品はタブー」ということです。ネット社会の現代、真似とかパクリっていうのはすぐ見つかってしまうのでさらに危険ですね。

では何を新しいとするのかということに話を戻しますが、これも簡単にいうと「過去を全部知った上で、それと被らなかったら全部新しいものです。」温故知新ということです。美術の世界で言えば、美術史を知らないと、評価されうるアート作品は作れないということです。これは表面的な新しさではなくて、作品の中身の部分だと思ってください。技法だけでも新しさがあればいいのかと言われることがありますが、クリエイティビティすべてがアートということではないので、またそれは別の議論かなと思います。

ということで、評価されうる美術作品を作るためには、美術史を知った上で新しいものを創っていくことが大切だということです。日本の美大生は基本的に美術史の授業に力を注いでいない傾向にあると思うので(私もそうだったので)、これを機に心を入れ替えて頑張りましょう。(課題に追われて、徹夜続きで、座学は睡眠を確保するための授業とかはナシの方向で)

美術史をどう捉えて勉強するか

美術史はもちろんこれまでの美術の歴史にまつわる学問です。本の中にも2種類あって、「歴史の流れを総まとめした本」と、「一つのテーマにおいてさらに詳しく調べた本」があります。後者は、例えば「印象派」のみの本だったり、画集だったり、「ゴッホの人生」を細かく追った本だったり。「人物画」のみにフォーカスを当てて様々な年代のマイナーな画家とかも含めて紹介する本だったり。美術は学問ですので、美術史学者がいて、大学の学科もあって、研究が今もなおされています。ですのでいろんな研究テーマで論文や書籍が販売されています。
ですが今回は「美術史入門」のオススメの本なので、私は前者の「歴史の流れを総まとめした本」をオススメします。

もしこのブログを読んで、美術史を勉強しようと思ってくださった方に説明をすると、上で書いたことに繋がるのですが、美術史を勉強する際には全ての流れを正しく認識することが大切だと思います。そうじゃないと何が新しくて、何が古くて、なんで今この現代で「自分の感情を表現した」作品が(日本以外で)評価されないのかイマイチぴんとこないと思います。どの過去の作品も、「その時代に作ったから」こそ評価されました。そしてどの時代もアンチテーゼ、つまり前の時代や風潮を否定することで新しい流れが生まれてきました。つまり作家や作品一つに目を向けるのではなくて、その前後を知る必要が出てきます。なので結果的に美術史全体を知って、どういう流れで2020年の美術が存在しているのかを知って、考える必要があります。

そして正しく理解して、それぞれの作品についての評価を自分の言葉で「言語化」して整理できるのが大切だと思います。自分の力で評論できるようになることが、自分の作品をよくできる近道だと思います。最終的に自分の作品が、どういう理由で、美術史の中でどういう新しい価値があるのかということまで、言語化できるようになることを目的として勉強、制作すると良いと思います。

世界中で評価されている、至極の一冊

The Story of Art. London: Phaidon 1950 – Ernst H. Gombrich (日本のアマゾンで英語版)(上記の画像のPHAIDONページ
Wikipediaによりますと、20以上の言語に翻訳され、世界中で数百万部も売られている美術史の本です。わずか400あまりの作品の画像ですが、それにまつわる解説が細かくわかりやすく説明されています。おそらく美術関係者でこの本を知らない人はいないと思うくらい、世界中で有名な本です。wikipediaによると日本語版もあるので探してみてください。(ほんの少し探してみたんですが、英語版しか出てこなかったので)改訂もされて2つの出版社から出ているようです。私はドイツ語版しか持っていないのですが、著者はオーストリア出身のようで、英語が母国語ではないため、(原本なのかな)英語版も難し言い回しが少なく、非常に読みやすいという話です。画像の本はポケットエディションで、もう少し大きめの本もあります。(この記事を書いてる最中ですが、今英語版を買ってしまいました…)下に紹介する本より、学術書っぽく本当に勉強に適している本だと思います。

大きな作品の画像と細かな解説が特徴の一冊

Art: The Whole Story – Stephen Farthing (日本語版-Amazon 世界アート鑑賞図鑑)

こちらの本も同じように世界中で翻訳されていて、有名な本です。ドイツ語版のこの本の改訂版のようなバージョンを持っていますが、非常にわかりやすく、なにより簡単だと思います。同じように美術史を洞窟絵画から現代アートまで網羅しており、500ページに渡り1000点以上の画像で細かく説明してくれています。特質すべき点は、全ての時代におけるだいたい有名な作家、作品をずらっと網羅している点です。そしてほぼすべてが見開き1ページで完結しています。上の画像のように、ドラクロワならこれ!っていう作品が紹介されて、左ページがその作品の概要、右ページは4つのクローズアップで、作品に描かれている内容の説明や技法について、そして作家の人生が完結に書かれています。ほぼ全ての時代に数人ずつ作家がピックアップされており、その作家の代表作がこのような形式で解説されていきます。入門書にはぴったりな本かなと思います。

美術書は基本的に少し値が張りますが、どちらの本もこれさえあれば基礎知識はバッチリ!というような本なので、本当にオススメです。全体的な流れをしっかりと勉強するのであれば、1冊目の方をオススメします。歴史的な流れという点において、2冊目は少し断片的に説明がなされて(見開きで完結なので)いますが、各画家、各作品の基礎知識をさっと知るにはかなりの情報量だと思います。

ちなみにですが別にアフィリエイトとかを組んでいるわけでもなければ、提供でもなんでもないので、私に一切収益がないので、気にせずご購入を検討されてください。

このような記事が好評だったら、どんな本を他に読んでいるかなど、別記事でまたご紹介できればなと思います。その他なにかリスクエストや質問があれば、コメント欄にぜひお願いします。

Masaki Hagino
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