考える力とその質の話

考える力とその質の話

 

更新がだいぶ開いてしまってすみませんでした。

今回はいつか記事にしようと思ったまま、なかなかできなかったこの内容。
時間があまりちゃんと取れないので、書きなぐってしまいますが、乱文はいつものことなのでご了承ください…

ということで、今回は思考力とそのクオリティについて。このブログでは、やはり多くの同業の方や、学生、またはアーティストを目指している方々に見ていただいていると思います。
これまで、それを細分化して、私の経験の話などを分けて話してきていました。

今回はその全てに当てはまる、ベースの部分の根本的な話。私は作家としてもっと早くにこういうことを意識しておければもっといろいろ変わったんじゃないかなと思うことでもあり、
そしてこの10年このことを意識し始めて、大きくいろんなことが変わったこと。それは思考の仕方が大きなメソッドでした。

この話に少しまつわる心理学の本を先にご紹介。
世界中でもベストセラーとなったDaniel Kahneman著、『Thinking, Fast and Slow』(邦題 : ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? )
英語でのsummaryはMediumで執筆している方いたので、こちらを参考にしてみてください。この記事の内容と直接関係はしてないのですが、思考について知る良い本だと思います。

 

思考の大切さと
自分の思考力を疑う必要性

私が作家活動に、もしくはどんなこと全てにおいて、最重要だと思うことは、物事をよく考えて、咀嚼する力だと思います。そしてその癖をつけることができると、自分の中にどんどん蓄積されて、無意識下でも素早く自分の答えにたどり着くことが出来る様になります。ただこの時に忘れないで欲しいのは、自分の思考とその結果出た答えを過信しすぎないこと、疑うことです。
いつだって、どの段階だって、今の自分は常に「井の中の蛙」状態であるということを、まず理解してほしいなと思います。特に島国で、さらに英語を得意としない我々日本人は、とても閉鎖的な考え方を持っているものだと思います。小学生、中学生、高校生。大人から振り返ってみると、どの段階だって思考力は「幼稚」だと思うでしょう。大人からすると、SNSのコメント欄とか見てれば、一瞬でどの年代の子が書いたかわかると思います。ですが本人たちは気づかないわけです。でもそれは年齢のせいではないわけです。小学生は徒歩圏内の子供達が、中学になると地域の小学校合併、高校になると区域が少し広がった中学校から人が集まります。つまり少し環境が変わって育った人との繋がりが増えていきます。そして自分と違った環境の考え方などを取り入れていきます。 ですが、結局高校生くらいまではだいたいが家と学校の往復なわけです。触れ合う人が数十人から、数百人になった程度です。そしてその狭い世界で生きていて、さらに年齢が同じなわけですので、思考というものがほとんど似て来てしまいます。これを少し広義的な意味合いで「井の中の蛙」とした場合、じゃあ大人になったらどうなるのか。大学生になれば全国から人が集まったり、アルバイト先で年齢が違う人と関わりだして、社会に出始めればもっとその幅が広がります。高校生までの閉鎖的な思考環境から、離れることになります。これできっと大人になって、一人前の思考環境が整った、と言われるかと言えばちょっと待った。と言いたい。

どの環境だって、差はあったとしても「井の中の蛙」なんです。社会に出たとしても、もっと広い目で見たらどうでしょうか。同業者としか関わってない、日本人としか関わっていない、日本でしか関わっていない、日本語しか話していない。
いい例えかどうかわかりませんが、例えばザッカーバーグが優れている人だと考えたとして、彼は世界中で仕事をして、そのレベルの人たちと仕事をしてどんどん情報を交換して、幅広い知識と資金的な面から来る常人離れした行動も取ることができるわけです。彼が「井の外の蛙」だと過程すれば、私たちはまだまだきっと小さな小さな井戸の中に住んでいると言わざるを得ません。

回りくどい説明をしましたが、何が言いたかったかというと、自分の思考を過信しないことがまず第一歩だと思うんです。自分が悩んで出した答えだから正しいという言葉を信じないで欲しい。だってその答えはまだ、狭い井戸の中の価値観で作られたものかもしれないのだから。

井戸がどれだけ広くなったって、井戸の中に自分と同じような蛙がたくさんいたとしても、井戸の底に住んでいることには変わりません。

 

思考と発想を
咀嚼する力

私が思考的になったのは、初めてアメリカに行った時でした。よくいる「根拠なき自信」みたいなのを纏って調子に乗っている大学生で、現地でその鎧をぼろっぼろにされてた時。お世話になっていたアーティストに作品を見てもらった時に聞かれた言葉がきっかけでした。

「なぜ君は自分の作品をいいと思う?」と聞かれた時でした。

いいと思うことに対して、自分の作品の自信の出どころを聞かれた時、私は当時なにも答えられませんでした。次の作品を見せると、「この作品のどこがいいと思う?」とまた聞かれます。絞り出した答えに対して、「どうしてそう思うんだい?」と聞かれます。さらに絞り出そうしても出てこなくなってしまって、とうとう彼に「それって答えって必要なの?」と聞くと、彼は「必要かどうかは自分で考えればいい」と教えてくれました。

結局彼は滞在中、答えなんて教えてくれませんでした。ただ私の生き方を変えてくれました。答えを出せなくて悔しくて苦しくて涙を流す毎日だったんですが、おかげで今は考えることの大切さを知ることができました。

世の中には、ステレオタイプの答えというのが非常に多くあります。決まり文句とか、常識とか、通例とか。それは過去誰かが考えて出した答えである可能性はあっても、自分では何も考えていないことだらけです。例えば「デッサンはうまくなければならない」とか。「デッサンは美術の基礎だ」とか。アートの形態は常に変化していて、時代が変われば評価基準も変わります。人物画を描く人にはデッサンは必要なのはわかります。少し進んで抽象画の人にもいるのかも知れない。でも今世界的にも主流なメディアアートとか、コンセプト系とか、インスタレーション系のアーティストに、デッサン力って必要なのか?とか。デッサン力を上げるその時間に、もっとそれぞれできることはあるんじゃないのか?とか。

世の中にある「こうあるべきだ」とか「こうしなきゃいけない」のは、いつの時代から言われてるのかとか、誰に当てはまることなのかとか。教授の言ってることは全て正しいのかとか。大学のカリキュラムは全て自分のためになるのかとか。判断材料は、広い知識と、柔軟な思考力、そして経験だと思います。知識は例えば本で、思考力は思考回数で、経験は行動などで培われます。今はインターネットを使って、世界中の作家の作品を見ることができるし、本だってすぐ手に入ります。日本語だけじゃなくて英語で検索すれば情報量はもっと増えます。

「咀嚼すること」とは、物事を多方面から見つめ直し、考え直すこと。

思考ができるようになったら
プランを立てて行動に移す

自分の思考が甘いということに気づいたら、その次はそれを理解した上で、プランを立てて行動に移すこと。思考力が足りないのはすぐにはどうにもならない。もっと言えば、どのレベルの人だって、1年後に振り返ってみれば今の自分はきっと思考力が乏しいわけで。上で言いたかったことは、自分の思考が偏っていること、思考力が足りないことなどに気づくこと、理解することが大切だということ。
今の自分でできる限りの思考ができれば、あとはプランを立てるのが大切。これはいつかの記事でも書きましたが、ゴールを1ヶ月後、半年後、1年後、3年後、5年後、10年後とかに細かく設定することです。一番いいのは遠いゴールから、逆算をして設定すること。そうすることで着実にゴールに近づいていく道しるべを自分で立てることができます。短いプランを設定することで、モチベーションを維持し、具体的な進行を実感することが大切です。これも思考が大切。
情報収集をたくさんしないと具体的なプランは立てることができません。プランは常に書き起こして、何度でも確認修正できるようにしましょう。最初は思考の癖がないととても大変だと思います。なんていったって10年後から逆算で想像しながら作っていかなければならないからです。想像力だけではただの夢を書いているだけになってしまいますので、計画とは言えません。

非現実的な目標を立てることは、逆にモチベーションを下げる結果になります。例えば、今年中に24kg痩せる!とか。じゃあ12ヶ月だから、1ヶ月2kgずつね、はいはい楽勝じゃんみたいなこと。人間は毎月同じペースで痩せないので、どこかで無理な月が来て失敗に終わって、あーあー無理だったといって余計なショックを受けて終わってしまいます。貯金とかも一緒。
自分を律するための目標をただ作るのではなく、根拠に基づいたレールを敷くことが大切です。例えば栄養学を学んで、食生活を整えるとか。そうすればどの本を読むべきか、その本を1日何ページ読めば、何日かかるのか。それを実行するのはいくらかかるのか。細かいプランということはそういうことも思考の中に入れて欲しいんです。

 

例えば私が考える必要があった
海外でアーティストになるためのハードル

まず一番ベースにあった目標のひとつ、「海外でアーティストとして食べていく」という目標の中、私は
・お金のことはどうするのか。
・ビザのことはどうするのか。
という大きな問題がありました。どの国にするのかということからスタートした時に、考える必要がまずあったのはお金のこと。
両親は背中を押してくれて、サポートもしてくれるという恵まれた環境でしたが、留学するとしたらじゃあそれがアメリカの大学なのか、ドイツの大学なのかということだけでも大きく内容は変わります。アメリカの私立の美大に行けば、その学費は年間300万円超えるところもあります。生活費、医療費、そして大学卒業後のビザはどうするのかとか。それをクリアするには、いろんな国を選択肢として広げる必要があって、自分の学びたいことが学べる環境などを思考に入れたあと、候補に出て来たのは学費のかからないドイツ。じゃあドイツの大学にはドイツ語が必要だけれどドイツ語の取得にはどうすればいいのか、どれくらいかかるのか、などなど。思考しなければならないことはたくさんあります。
そしていろんな情報を見つけたあとは、それをひとつひとつ咀嚼する必要があります。例えばドイツ語B2レベルが必要。という大学が多いですが、それは入学の「必要最低条件」であって、B2レベルが話せてドイツの大学でやってけれるのかと言われれば、絶対的にNEINです。そんなのでドイツ人に囲まれたグループディスカッションでハイデガーについて討論できるのか?絶対できません。なので情報を情報だけで見るのではなく、想像力を働かせて、思考を重ねる必要が絶対あるはず。ただ海外で腕試しに来たというアーティスト志望の人は、大概数年で日本に帰ってしまいます。言語とかお金とビザの問題でトラブルに陥るからです。

作品についてはどうするのかという、一番大切な部分を差し置いて、考えなければならないことはたくさんあります。
今偉そうにこう書いている私ですが、渡独を決めた当時23歳は、全然考えられていませんでした。なのでみなさんに言いたいことを今こうして書いているわけで…

思考回数を経験に換えて
思考の質をあげていく

最後に思うことは、思考回数は結果的に思考の質に繋がっていくと思います。 過去何百回と思った「もう絵を描くのやめようかな」っていう感情とか悩みとかだってそう。それをたくさん繰り返して、思うことは「今はもうその段階はクリアした」ということ。その都度いろんなことを思うので、悩みのネガティブ質っていうのも上がってくるため、自分の中の処理が追いつかない時が来ます。乗り越えても乗り越えて自分が成長しても、悩みもまた外見は同じだけど、中身が重くなった同じ悩みが来たり。どんどんそういうのを乗り越えていくと、ちゃんと自分に覆らない答えが持てるようになります。
井戸の外に出たとは思わないけれど、少なくとも井戸の壁を登って、外の光が見える場所にまで来て、「自分は井戸の中にいるんだ」ということを理解することはできるようになったと思います。そういうわけで、自分の井戸の深さとか暗さとかを知れるし、外がどんななのか、外にいる蛙と自分との距離はどれくらいあるのかとか、いろんなことが井戸の中からでも見えるようになってきたように思います。
井戸の外に出れば、きっと自分の思考に確固たる自信が持てるんだと思いますが、今はまだ井戸の中なので、「自分の思考はまだこれくらいで、何が足りないのか」ということが理解できている状態。

思考の質は、それまでの思考回数とは必ずしも比例しないと思います。質を上げるファクターはたくさんあると思いますが、言いたいことは、思考の質が絶対的に大事だということ。きっと今日の自分は一年後の自分から見たら、全然ダメな思考をしているはず。今あなたがどんなに苦労して、何日も何日も苦しく悩んだとしても、思考の質を持っている人にしたら5秒で解決することかも知れません。

思考の質をあげるためにも、思考が必要。だからこそ、きっと思考という力が、成功に直接つながるものだと自信を思って言えます。
多方面から自由な発想で、いろんなことを考えられるようになれば、きっと簡単に目の前の扉が開くと思います。そして正確なプランを立てられれば、実行できる確率も成功確率もどんどん上がっていくと思います。

時にはプランがうまくいかないときもあると思うけれど、それを見越してプランに余裕を持つとか、それもまた思考の幅のこと。

 

そんなわけで、なにかまた悩みがあったりする人は、どしどし質問を募集しています。
この思考の質の話もツイッターで受けた話を元に制作しました。
長くなってしまったけれど、これを読み終えた方の気持ちがすっきりして、モチベーションがあがったりしてればいいなと思います。