100年後に作品を残すことと美術家の本質の話

100年後に作品を残すことと美術家の本質の話

タイトルだけ重そう。どうしよう。
そんな硬い真面目な話ではないのでご安心を。

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今回はメンバーシップ記事からの転載です。
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昨日高校の同窓会があって、久しぶりに、いや本当に数年ぶりに美術に無関係の人たちと長時間、話をしたような気がする。
いやこれ本当に誇張でもなくって、普段から篭りがちで作業をしていて、知人友人はSNSを含めても美術関係ばっかりで、
長時間ご飯を食べながら、美術関係者じゃない人達と話をするなんて、本当に本当に何年振りなんだろう。

美術に携わってる人たちでさえ、知識や認識の差があったりしている中でポジショントークを普段繰り広げているけれど、これが美術に興味のない非業界人とだったらどうだろうか。

同級生だからイジられたりして、よく言われたことは
死んでから評価されるんやろ?」という
ゴッホ(とモディリアーニとヘンリーダーガー)以外どうせ知らない人が多いのに、どうしてこれが一般的なアーティスト像としての認識になっているのだろうか。
いやすごいよね、これ。
アーティストは死んでから評価される。っていう認識がすごい蔓延っていて、共通認識になりつつあるんだなと。

あとは、やっぱり子育て世代というか、子供が何人かいる子が多くて、身近にあるアートっていうのは
絵本作家」なようだった。
知り合いがさーっていう入りから出てくるアーティスト像っていうのは、イラストレーターとか絵本作家のようで、話を絡めていくのはなかなか難しい。

じゃあ美術家ってどんなことやってるのか?っていう話を端的に、0からではなくて既に間違った認識を持っている非業界人に説明するのってどうするべきなのかちょっと考えていました。

現代美術家とクリエイターの違い

学問的な違いみたいな話はこれまでやってきてるので、そういう話ではなくって、例えば絵本作家と、例えばおしゃれな感じの絵描きさんとか絵師さんとか(わかんないけど)
そういう方達と、現代美術家ってどう違うのか?
これを難しいまどろっこしい、長い前置きも知識もない感じで伝えるためには?

いやこれは実際どう伝えるべきかという方法論を考えたいというよりは、これを考えると、自動的に本質の部分に目を向けることになるかなと思いました。

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例えばコンテンポラリーって新しいものを作ることだけれど、「新しさ」の定義や度合いが結局違う。絵本だって一つとして全く同じものを作ってる人なんていないから、そりゃ全員「新しい」ものを作っているわけで。コンテンポラリーの中の度合いの新しさっていうのは、もうちょっと大きな枠だったりするし、細分的なことの新しさの度合いの尺になっちゃう。

これで「コンテンポラリーは新しいもの作るんだよね」と言うとやっぱり伝わらない。

アートは感性とか自己表現っていう認識も強いから、学問だとかって言っても通じにくい。難しい。

文化を未来に紡ぐ

まぁまぁカッコつけた言い方をすると
この「文化を未来に紡ぐ仕事」っていうのはどうだろうか。

具体的な内容からはむしろ遠ざかってしまうんだけれど、現代美術家の仕事の本質はこういう部分にあるんだと思っています。

コンテンポラリーとして全く新しい美術の形を生み出したり
これまでの美術を学問的に研究して、アップデートしたり。美術は学問であると同時に文化的な役割も担っている。

こういう美術の中で新しいことを作って、評価を受けるというステップを経由することやマーケットの中で知名度を上げることで、美術史に残ることが可能になる。

その結果その作品や作家というのは、未来に残る文化になるはずだ。

デュシャンが大きな変革をもたらしたように、後世に大きな影響を与えた作家はたくさんいる。寧ろ美術史に載っているということは、つまり後世に影響を与えているということとどう意義なのかもしれない。

そう思うと、現代美術家という仕事は、これまでの美術をアップデートして、この文化を未来に紡いで行くことなのかなと再認識したような気がする。

100年後に遺る作品を作る、残してもらうように活動をする。

この事がきっと大切な部分だと思うのと、この事を伝えていくということも一つの仕事なのかなと思っています。