【Q&A】海外で活動する上で「衣・食・住」や「発話する言語」の違いが、作家に及ぼす影響について
今回はメンバーシップ内でご質問頂いた内容に答えて行きます!
なんかこういうの書いて欲しいとか質問あったらどしどし応募してるのでお願いします。
質問内容はこちら↓
[概要]
◉海外で活動する上で「衣・食・住」や「発話する言語」の違いが、作家に及ぼす影響について伺いたいです。
[理由]
◉留学などで初めての海外生活を検討している方々にとって、マサキさんの11年間の経験談は関心が高い話題だと感じます。
[切り口]
◉海外生活の初期に困ったこと(海外生活あるある)
◉海外生活で、暮らしのスタイルはどう変化したか?
◉また、暮らしの変化は、作家としての精神や作品制作に、どのような影響を及ぼしたのか?
◉食事と体調管理
◉現地で新たに構築した生活習慣(毎週楽しみにしていたモノ・コト)
◉作業音楽は現地の曲? それとも日本の曲?
◉海外での11年間の暮らしを通して、自分の生活習慣で大きく変化した点 etc.
海外生活での様々な変化
僕の場合は24の時にドイツに、しかもあまり英語が通じない東ドイツに移住をスタートしたんですが、その時はドイツ語がほとんど話せませんでした。
友人に助けてもらいながらいろいろと手続きを済ませなんとかドイツ語学校に。
住居はドイツ人学生4名と一緒にルームシェア。わかんない事だらけでスタートしました。
カルチャーショックというか分からないこと違うことばかりの中生活することは
単純に言うと、マイノリティを感じ続けるということです。
スーパーで買い物するのもギリギリで、病院に行こうものなら電話予約も取れない。
「貴方のドイツ語何を言ってるかわからないんで。」っていってガチャ切りされたこともありました。
アジア人差別だって全くないわけじゃないし、何よりも「ドイツ語が話せないやつ」ということだけで上から来られます。
この言語が通じない差別みたいなのはどこの国でもあって、会話できないやつにイライラする。教養が足りないと見なされる。
ましてや24歳のアジア人はティーンと間違えられるので、年齢的なマウントもあったりで。
そんな感じでドイツ語を勉強しながら、美大受験の準備も並行していました。制作してポートフォリオを作ったり、受験の応募要項を漁ったり。
制作で悩んで病む人もいるようなそんなプロセスの中、毎日語学学校はあるし試験はあるし、なんなら語学の試験をクリアしないと受験できないし
ビザの圧力もあって、これが失敗したら帰国しなきゃいけないとか。
そんな重圧の中、この「海外でひとりぼっちクエスト」を実行するのは過酷だったりしました。
衣食住の影響
まず変化を挙げますと
衣
とにかく機能性重視。
ブランドなんて誰も知らないし興味がない。
なんなら男がファッショナブルだと、同性愛者に間違えられるので、日本人男性的なおしゃれは基本なし。
食
日本食材が全く手に入らないわけじゃないけど、非常に割高なので、基本的にはルームシェアのドイツ人と合わせる。
ドイツ人は夕飯に温かいものを食べない習慣があったりするので、パンにハムとチーズでおしまい。みたいな食生活も普通。
貧乏学生そのままという感じ。
住
ドイツ人4名といきなりのルームシェア。かなり戸惑うことばかりで、些細なことから大きなことまで。でも多様性とかをすごく身に染みて実感する。
よそはよそ。と言うか。
こんな感じでした
こんな感じでした。
制作などへの影響もあったように思います。
やっぱり孤独感が強いわけで、自ずと自分の内側に内側に思考がいってしまいがち。病んでるような状態。ここまでの生活をしてまで自分が何をしたいのか、何をすべきなのか。
ドイツでこの先やっていくためにはどうするべきか。
そういう思考を25歳でずっとずっとやっていたんだと思います。
だからまずは語学を頑張りました。
語学からの変化
集中コースに通っていたので、毎日朝8時から(ドイツは始業8時)13時までのコースを約1年。
A1からC1というレベルまで一気にやりました。
この頃は日本人と接する機会がほとんどなかったので、ずっとずっとドイツ語。日本語に触れないように触れないように。
ドイツのラジオを聴いて映画を見て。新聞を読んで検索もドイツ語で。
ついでにドイツでのドイツ語の授業は、全部ドイツ語なので
僕は今でもドイツ語-日本語で通訳翻訳ができません。
これはやっぱりドイツ語を話せるということとは、完全に別のスキルです。
そのうち慣用句がドイツ語で出てくるようになったり、思考がドイツ人的になったり。
ドイツ人は
自分の責任じゃない場合は絶対に謝りません。
クレームとかでもそう。クレームを受けた店員のミスじゃないから。あと基本的に日本人の体育会系的な、根性とか言い訳するなみたいなのもない。
なので自然とはっきりものを言うようになるし(言い訳を丁寧にするほどの語彙力もない)
逆に語彙力が乏しいせいで、言いたいことが言えないので飲み込むしかないという日本人っぽさが働いたりもする。
言語で性格が変わるという論文はたくさんあるけれどその通りで、
日本語、英語、ドイツ語、オランダ語が少し話せるようになった今
それぞれで思考の仕方が変わるし性格も変わると思います。
作家としての影響
作家としてどういう影響を受けていたかということだけれど…
一つは先に挙げたように、言語的にもドイツ人と仲良くなれないので孤独、環境的にも単身ドイツ移住なわけなので孤独。
もちろんそれは少しずつ改善されては行ったけれど、
なので基本的に自己との対話の時間が増える。
ドイツでどうしなきゃいけないのかとか
何を表現したいのかとか
徹底的に考え抜くことを強いられていたように思います。思考的な人間になったのは、アメリカに行った時がスタートだとは思うけれど、こうやって強化されたかなと思います。
ロジカルであるべきかなとか。
本をたくさんたくさんたくさん読んだし、試行と思考を繰り返しました。
大学に入学してからは、もっとドイツ人と密にコミュニケーションを取らなくてはいけなくて。
少人数の哲学のクラスで、カントについて1時間議論しなきゃいけないとか、教授やクラスメンバーと自分の作品について何時間も議論しなきゃいけなかったりとか。
なので自分の思考を、苦手な言語で説明しないといけない。
だから必然的に、言語化を丁寧にしないといけない。
例えばプレゼンの前とかは
ドイツ語の原稿を用意するし
想定されうる質問を羅列して、あらかじめ答えを言語化して纏めてから挑むとか。
言語化を死ぬほどやった気がします。
そんなスラスラドイツ語が喋れるようになるまでは特に。
そうするとやっぱり自ずと自分に何が足りないのかとかも見えてくるので、知識を入れるところに戻るし、またそれを咀嚼するために言語化をするし。
ドイツ哲学を原文で何とか読めるようになった頃、
作品もぐっと良くなったように思うし、何より人として成長できたように思います。
乱文だけどこんな感じでいかがでしょう!
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