私が海外でアーティストとしてスタートアップできた理由 part 1
今まで何度か質問を受けた「どうやってドイツでアーティストとしてスタートしたんですか?」
「どうやってギャラリーを捕まえたんですか?」という疑問に、私がこれまでどうやってここまで来たかを簡単にまとめながら、分析した内容をお話ししたいと思います。
私のアーティストとしての立ち位置
これまでの簡単な経歴と今現在の私の立ち位置を少しまとめたいなと思います。
まず初めに私は日本で一般大学の芸術系の学部で学位を取得しました。在籍中に一度休学をしてアメリカに短期留学をします。大学の教授のツテを伝ってテキスタイル系美術館のインターンと、現地の美大の聴講生として授業をいくつか取っていました。
そのあと日本で学部卒業をして、そのまま渡独しました。最初の1年半語学学校に通い、ドイツ語を上級コースのC1まで受講し、美大入学に求められるドイツ語の試験TestDafを取得しました。そのまま平行して作品作りをし、作品集を用意していました。
ドイツ国内の美大をいくつか受験し、合格したのが現在通っているBurg Giebichenstein Kunsthochschuleです。
入学後から現在のメイン作品のシリーズを進め、アーティスト活動をはじめました。展示を増やし、ギャラリーの契約を増やし、現在では年間10以上の展示をドイツ国内を中心に行なっています。そこから作品販売の収入のみでほぼ生計と活動費をまかなっています。あとは受賞や助成型のコンクールなどの資金が追加で足されている状態です。
世界レベルのアートフェアにも出展できるようになってきました。
ドイツには芸術活動を行なっている人(音楽家や雑貨、アクセサリーなどのクリエイター、個人デザイナーなども含め)が数万人いると言われ、そしてその中でもそこからの利益で生計が建てられているのは約2%である、という雑誌の記事を読んだことあります。
どういうプランでここまで来たのか
アメリカへの留学から考えていたのは、
「日本国外で長期的に活動をするため、現地で認められる力をつけるために美大に入学すること。そして学生の間に活動の基盤を作ること」
ということでした。ここで重要なことは、「留学」を最終目標に持って来ていない点です。例えば2年ほど大学院留学をして日本に帰国、ということを考えていませんでした。
現地の美大に留学することのメリットはいくつかあります。一つは最初に挙げた「現地で認められる力を手に入れる」ということ。世界レベルと言っても、やはり国それぞれに少しずつ傾向というものがあります。海外=世界レベルといった漠然としたことではなくて、日本で学んで培って来たことを持って来て、現地でまた新たにいろんなことを学ぶということに意味があると思います。
そしてもう一つは「学生ビザを取得すること」です。日本人ですのでどの国に行ってもビザ問題は付いて回ります。ですので学生を長く続けられることは、同時にその国で長く滞在できるということです。さらにドイツの大学は学費が無料であることから、金銭面もかなり長期滞在のプランには向いているはずです。
私の通っている大学はディプロマという5年一貫制度の体系ですので、一度入学すれば5年は滞在可能です。それまでの語学準備ビザで2年貰えるので、この流れでいけば7年は最低でもビザを手に入れられることになります。またドイツは保険料が高いのですが、(一般企業に勤めているような収入であれば月5万以上します)学生料金だと1万円程度で済ますことができます。そのほかにも学生料金という形態が多いので、金銭面で学生は有利です。
そして学生の間に活動の基盤を作るという点を最初のプランに入れていたのは、卒業後に困らないためです。上でも触れましたが、卒業すれば
・大学のアトリエや設備が使えなくなる(卒業後自分のアトリエを借りるのに月々お金がかかる)
・保険料も跳ね上がる(収入によりますが学生料金の倍はかかるようになります)
・学生ビザがなくなる
という主に金銭面でのトラブルが降りかかって来ます。特にビザの問題は大きいものです。(例えばこれがアメリカだと、卒業後の現地滞在のハードルはグッとあがります。)ですがドイツはフリーランス(アーティスト)ビザというような形態のビザを比較的に取りやすいです。しかしそのビザを手にするためには、収入を証明したりギャラリーとの契約を証明したりなど、キャリアを証明する必要があるのです。またドイツではKSK(KünstlerSozialKasse)というアーティストの健康保険を半額金額負担してくれる団体もありますが、それもまた同じように加入にキャリア&収入証明をする必要があります。
つまり学生を謳歌した後、卒業して「よし、アーティストになろう!」なんて思っても、降りかかってくる問題が大きすぎるんです。ドイツ人ですら大きな問題になるのに、外国人が海外で一人お金に困った場合、帰国が頭をよぎります。それは例えば行き詰まったから一般企業に就職しようといっても、語学的にもそれが簡単にいくわけではないからです。もちろんビザの関係でそんな簡単に定職について暮らしていけるわけではありません。
と、いうことで、学生のうちからアーティストとしてやれるだけのことをやっておくことが、ドイツに長期滞在するという点でとても重要でした。
自分の強みはどの部分にあるのかをまず理解する
さて、ここから本題になりますが、どうやって単身ドイツでアーティストとして活動できているのかという質問に対してです。その前に重要なことは自分の作品についてしっかりと理解をすることかなと思います。これができてない人がとても多く、結果どうやって活動をしていくのか指針が見つからない状態に陥っているのではないかなと思います。
これまで挙げたファクターをまとめると、
・ドイツ美大で学生ビザで滞在をしていること。
(更に言えばキャリア&収入があるため卒業後もフリーランス(アーティスト)ビザをいつでも取得できる状態)
・ドイツ美大でドイツ
・作品販売の収入で、生活費と活動費をまかなえていること。
・契約ギャラリーを4つ、また単発オファーをいくつかもらう状態で年10回ほど展示がある。
・ギャラリーを通して世界レベルのアートフェアにも出展できていること。
・コンクールに応募をして、ノミネート&受賞がいくつかあること。
というのが、現在の活動の内容と状況です。強みの部分では
1. 作品がドイツ的、そして日本的であること。(また日本人であること)
日本の大学で学んで来たことと、ドイツの美大で学んで来たことを融合できている点が、自分の作品の強みだと思います。私の作品は展示をすると、「日本人の作品らしい」と言われることもあれば、「ドイツっぽい」と言われることもとても多いです。これまでの記事でも多く述べていますがドイツの作品はコンセプトを大事にしているものが多いです。日本人作家に多く見られる工芸的な作品美や個人的な感情や風情などを大切にしている作品とは対照的で、外見よりも中身に目を向けていることが多いです。(そして頭でっかちになりすぎて、作品が雑すぎてコンセプトばっか語っててなにも伝わんない、みたいな作品も多いけれど) 学術コンセプトを持ったアプローチから美術的価値を求めて、テクニカルな作品美を持った作品というのが以前いただいた作品評価のコメント内容でした。実際の私の作品のレベルがどうかは置いておいて、目指している形はこういう部分で、評価されている部分も同じであることは、とても重要な嬉しいことかなと思います。
2. ドイツ美大の学歴があること。
これは特別重要なことではないと思いますが、日本の大学を含め学歴があることは一つのファクターなのかなと思います。それだけ専門的な知識などがあるという証明にもなりますし、コンクールによっては美大を出ていないと応募できないこともあります。キャリアとしてのアピールになります。
という二つが作品の質以外の部分で重要なことなのかなと思います。
….
しまった。また長くなってしまった笑
ということで実際どうやってここまで来たのかは次の記事にします!
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Masaki Hagino
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