リネット・ヤドム=ボアキエ:描かれる”想像上の人物”が投げかける現代のアイデンティティ
- 2025.09.07
- アーティスト

こんにちは、こんばんはMasaki(@masakihagino_art)です。
今回から結構な期間、更新が滞ってしまっていた、世界で注目されているコンテンポラリーアーティストの紹介記事を復活させていこうかなと思います。
世界では結構な注目度があるのに、日本語ではまだ情報が少ない作家を、海外のサイトからまとめていくので、ぜひぜひじっくり読んでみてください!
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サムネイル:
https://jackshainman.com/exhibitions/in_lieu_of_a_louder_love
架空の人物が現代のアイデンティティを問う:リネット・ヤドム=ボアキエの静かなる肖像画
実在しない人物を描き続ける画家、リネット・ヤドム=ボアキエ(Lynette Yiadom-Boakye)。彼女の作品に登場する人物たちは、特定の背景や物語を持たず、ただ静かに佇んでいます。しかしその眼差しは、観る者自身の視点や偏見を深く問い直す力を秘めています。なぜ彼女は架空の人物を描くのか?そしてその作品が現代社会に投げかけるメッセージとは?
現代美術において、アイデンティティの表現は常に重要なテーマでありながら、その手法や表現方法は時代とともに変化し続けています。1977年にロンドンで生まれたガーナ系イギリス人画家、リネット・ヤドム=ボアキエ(Lynette Yiadom-Boakye)は、独特の手法で現代のアイデンティティ問題に新たな視点を提供する、注目すべき現代画家の一人です。彼女の作品は、実在しない人物を描くことによって、鑑賞者に深い問いを投げかけ、現代社会における表象と実在の関係性を再考させる力を持っています。
https://www.tate.org.uk/art/artists/lynette-yiadom-boakye-16784
想像上の人物が生み出すリアリティ
ヤドム=ボアキエの作品で最も特徴的なのは、彼女が描く人物がすべて架空の存在であることです。しかし、これらの人物たちは驚くほど生き生きと描かれており、鑑賞者は彼らが実在するかのような錯覚を覚えます。彼女の代表作のひとつである《Condor And The Mole》(2011年)では、沈思黙考する人物の表情が繊細に描かれており、鑑賞者はその内面を想像せずにはいられません。
Condor and the Mole | Art UKCondor and the Mole by Lynette Yiadom-Boakye (b.1977), 2011,artuk.org
この手法は、単なる技術的な巧みさを超えて、現代社会における表象の政治学に深く関わっています。ヤドム=ボアキエが描く人物の多くは黒人ですが、これは意図的な選択です。しかし、彼女はこれらの人物に特定の物語や歴史的文脈を付与することを避けています。この「物語の不在」こそが、鑑賞者の想像力を刺激し、それぞれが独自の解釈を生み出す余地を作り出しているのです。
時間と場所から解放された存在
絵画に登場する人物たちは、特定の時代や場所に縛られることがありません。彼女の作品《Any Number of Preoccupations》シリーズに見られるように、背景は最小限に抑えられ、人物そのものに焦点が当てられています。このアプローチは、現代社会における流動性の高いアイデンティティのあり方を反映していると考えられます。
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