セシリー・ブラウン、なぜ今世界が注目?―現代女性画家の新たな到達点

セシリー・ブラウン、なぜ今世界が注目?―現代女性画家の新たな到達点

セシリー・ブラウン――いま世界で最も注目される女性画家のひとり。
彼女の大規模回顧展はアメリカを巡回し、絵画の新たな可能性を示しています。抽象と具象の境界を揺さぶる筆致は、美術史と現代文化を大胆に結びつけ、ルーベンスからデ・クーニングまで、多彩な影響を独自の言語に変換します。
市場でも高額落札が相次ぎ、その存在感は確固たるものに。


こんにちは、こんばんはMasaki(@masakihagino_art)です。
今回から結構な期間、更新が滞ってしまっていた、世界で注目されているコンテンポラリーアーティストの紹介記事を復活させていこうかなと思います。

世界では結構な注目度があるのに、日本語ではまだ情報が少ない作家を、海外のサイトからまとめていくので、ぜひぜひじっくり読んでみてください!
また、現存作家を紹介していくので、著作権の関係で画像を直接ここに貼ったりはしない方が良いので、リンクだけまとめて行く形になります。ジャンプするのは手間かも知れませんが、そこだけご了承ください。

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美術界を席巻するイギリス人画家の現在地

2024年から2025年にかけて、Cecily Brown(セシリー・ブラウン、1969-)の大規模回顧展「Themes and Variations」がアメリカの主要美術館を巡回している。ダラス美術館での開催(2024年9月29日-2025年2月9日)に続き、フィラデルフィアのバーンズ・コレクション(2025年3月9日-5月25日)でも開催されるこの展覧会は、彼女の作品がアメリカで開催される最大規模の個展となっている。この一連の展覧会は、単なる作品紹介の枠を超えて、美術史と現代文化を再構成する彼女の革新的なアプローチに焦点を当てている点が特徴的です。

Cecily BrownLearn about the work and career of artist Cecily Brown. Artwogagosian.com

現代絵画の世界において、これほどまでに注目を集める女性画家は稀有な存在と言えるでしょう。ブラウンの作品は、Willem de Kooning(ウィレム・デ・クーニング、1904-1997)、Francis Bacon(フランシス・ベーコン、1909-1992)、Joan Mitchell(ジョアン・ミッチェル、1925-1992)といった現代画家から、Peter Paul Rubens(ピーテル・パウル・ルーベンス、1577-1640)、Nicolas Poussin(ニコラ・プッサン、1594-1665)、Francisco de Goya(フランシスコ・デ・ゴヤ、1746-1828)などの古典絵画まで、幅広い影響を受けている。こうした多層的な芸術的背景は、彼女の作品が単なる現代絵画を超えた普遍的な魅力を持つ理由の一端を説明しています。

アートマーケットが証明する圧倒的な評価

ブラウンに対する国際的な注目度は、アートマーケットにおける作品価格の推移を見れば一目瞭然です。2020年には、Gagosianのオンライン・ビューイング・プラットフォームを通じて、彼女の作品《Figures in a Landscape 1》(2001)が550万ドルで売却され、これは公開された取引としては彼女の作品の史上2番目の高価格となった。また、2000年11月に初めてサザビーズとクリスティーズ・ニューヨークで競売にかけられた際、作品価格は予想価格の2倍となる6万ドルから9万ドルで落札され、翌2001年には早くも10万ドルを超える価格を記録している。当時彼女はわずか32歳でした。

近年のマーケット動向はさらに加熱しており、2022年の報告によると、ある作品が2年余りで442パーセントの価格上昇を見せ、220万から280万ポンド(300万から380万ドル)の予想価格で出品されるケースも見られました。これらの数字は、単なる投機的な価格高騰ではなく、アート界全体が彼女の作品に対して抱く本質的な価値認識の表れと解釈すべきでしょう。現代絵画市場において、これほど安定した価格上昇を見せる女性画家は極めて限られており、ブラウンの市場的地位がいかに確固たるものかを物語っています。

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具象と抽象の境界を溶解させる表現技法

ブラウンの作品は具象と抽象の交差点に位置し、巨大なキャンバスに、身体の断片を思わせる形態や美術史的モチーフを、身振り豊かな筆致で融合させている。この技法的特徴は、20世紀後半から21世紀にかけての絵画表現における重要な到達点の一つと考えられます。

彼女の作品を理解する上で重要なのは、決して衝撃性や挑発のみを狙った表現ではないということです。性的な主題と抽象表現主義的な身振りのスタイルを探求するブラウンの作品は、同世代の中でも最も影響力のあるものの一部として認識されている。大きなキャンバス上では、しばしば色彩のベールの下で性的行為に従事する人物が描かれている。この表現は、人間の根源的な営みを美術史の文脈の中で昇華させる試みとして捉えるべきでしょう。

古典絵画の伝統、特にバロック期の画家たちが得意とした官能的表現を現代的な抽象技法と融合させることで、ブラウンは新たな視覚言語を創造しています。例えば、Peter Paul Rubens(ピーテル・パウル・ルーベンス、1577-1640)の豊穣な肉体表現や、Francisco de Goya(フランシスコ・デ・ゴヤ、1746-1828)の暗い情念を描いた《黒い絵》連作(1819-1823)における心理的深度を思わせる要素が、彼女の作品には現代的な解釈で組み込まれています。この点で、彼女は単なる現代画家ではなく、美術史の継承者としての側面も持っているのです。



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