【Q&A】デザインとアートの違いはどこにあるのか

【Q&A】デザインとアートの違いはどこにあるのか

ちょっと更新が空いてしまいそうなので、以前募集していた質問箱(今でも募集してます!)から
お答えしたものを少しずつ転載していこうと思います。匿名で質問できるので、なんでも是非投稿してみてください。
ばばっと書いているので、乱文になってると思いますが、何卒ご容赦ください。

今回はデザインとアートの違いについて。
日本で大学ではデザイン学科に所属していたので、多少知識はあるものの、社会人としてはデザイン事務所でバイト程度なのであまり詳しい話になるのと参考にはならないと思いますので、デザインについての意見は当たり障りのない部分だけを解説しています。

 

デザインとアートの違い?

結論から先に言うと、お互い別のものですが、「重なっている部分がある」という感覚でいいと思います。

デザインとはなにかという問いで、よくある答えが問題解決モノのデザインと、コトのデザインです。

モノのデザイン」とは、表面的な部分での形のデザインことを指します。
一番世間でよく使われてる「デザイン」とは、表面的なものを指すような傾向があると思います。わかりやすく言うと、かっこいいとかおしゃれなデザインとか「外観」を設計するものです。ただこれはデザインが担っている役割のほんの一部分です。もう一つこの「モノのデザイン」で大切なことは、例えば「便利になる」だとか、「持ちやすくなる」という、形のデザインによって機能性をあげるという役割もありますね。

コトのデザイン」というものはモノのデザインを使って(もしくは使わないで)その周りの環境を変えて便利にするようなデザインのことを指します。現代ではテクノロジーの力が多く使われるでしょう。これは別の言い方では環境デザインなどとも言ったりするかも知れません。心理的、肉体的に人間の行動を制限したり、もしくは解放したりすることで、その環境をいい方向に操ることが可能です。

いい例ではないと思いますが、例えば電車の座席に少し窪みを持たせるようなデザイン。例えばこの窪みの角度や幅などを設計するのが「モノのデザイン」で、座れる人の数を変化させる(環境を変化させる)という部分が「コトのデザイン」の部分です。
スタートの段階で、まず問題定義があります。この場合は「もっとみんなが詰めて座れば、座れる人数が増えるのに 」という問題があり、その解決方法として「窪みをつけることでパーソナルスペースの幅を制限し、座る人数を増やす」ということになります。たった窪みをつけるだけで、心理的、肉体的と両方の制限をかけていることがわかります。

 

デザインではこの「コトのデザイン」が大切なように思います。そのための「モノのデザイン」です。 ビジネスやセールスのことを考えると売れるようなおしゃれな外観を設計するデザインに目が行きがちですが、実際は心理学や人間工学、力学などを用いている部分も大切です。

ここまででわかるようにデザインには基本的に「相手(ターゲット)」が存在します。ターゲットがいて、問題があって、それを解決するのにデザインの力を使うという形が理想です。
もちろんビジネスの世界になれば、そんなの関係なくてお金が稼げるからっていうデザインの仕事もたくさんあると思いますが、今回はとりあえず概念的な部分のお話でストップ。

 

一方アートは、表現に重きを置いているといえますね。基本的には相手を想像し、問題解決などの役目を担っていないものが多いでしょう。

一概にははっきりと言えない作品も多いと思いますが、基本的にはこの「ターゲットがいるのか」「問題解決に向かっているのか」という点が大きな違いだと思います。中には、デザインの力でアートの意味合いもっているものもあれば、逆もあると思います。コンセプチャルアートの中で、インスタレーション系のものは、デザインの力を借りているようなものも多くあるでしょう。
このブログで言っているような、学問的な美術としてのアートと、デザインがかぶる部分は少ないですが、世間一般で認知されている芸術的な”アート”であるならば、デザインのモノのデザインに使われていることも多いでしょうし、多くの方が同じように認識していることも頷けます。
そう言った意味でも、チームラボの作品だったり、吉岡徳仁さんの作品だったりが、デザインとしてでもアートとしてでも世界で評価されているのは納得できます。

概念的な部分では全く別物なのですが、重なっている部分、つまり応用がどちらにも効く部分があるため、
少し形を変えればデザイナーが芸術作品を作ることもできれば、芸術家がデザインできることもある。

というのが答えとしてまとまってるかなと個人的に思います。

今回は特にプロダクトデザインに関わるような例を出してみました。視覚的に情報を相手に伝えることがメインとなりうるグラフィックデザインでも同じようなことが言えます。モノのデザインのテクニックや内容に目を捉われがちですが、デザインにもいろんな媒体があって、モノのデザインだけで終わっていい仕事もあれば、かっこよさや心地よさなんかを追求する形もあります。今やソフトの性能の向上や、それを形にする機械や素材の性能が上がって、競争相手が多いことなどから、多様性と斬新さが求められることもあると思います。
そう言った意味で「デザイン」の本質から離れて、何かを(主に商品を)誰かに対して社会的なクリエイティブなことにフォーカスするデザインのケースが増え、
また逆に、「アート」の本質から離れて、感性や感覚などを共有するような、個人的なクリエイティブなことにフォーカスするアートのケースが増えた結果

現在ではこうやって「デザインとアートの違いはどこにあるのか?」なんて疑問が浮かぶのかなと思います。お互いは割と別の場所に、もしくは対極にあるかもしれないけれど、お互いの本質から少し外れた場所が、割とその中心点だった、というのが現代のクリエイティビティの様相かもしれません。

今回はデザインをメインに話を進めましたが、普段はアートがメインで話が膨らんでいるので、じゃあアートの本質ってなんだろうと思った方は他の記事もぜひ。
別にアートは個人的な感情を表現するものではないし、社会性に満ち満ちている作品もたくさんあります。自己表現がアートだということでもないのです。